数字で見る日本の動物医療:農林水産省「飼育動物診療施設の開設届出状況」最新動向
動物医療業界において、近年の病院開設数の推移や地域別の分布を把握することは、中長期的な経営戦略を立てる上で欠かせないデータとなります。
今回は、農林水産省が公表した最新の「飼育動物診療施設の開設届出状況(令和5年12月31日現在)」に基づき、現在の国内動物医療施設の現状を客観的な数字から読み解きます。

1. 全国の診療施設数は緩やかな増加傾向
令和5年12月31日時点での全国の飼育動物診療施設数は、総数で16,637施設となりました。前年(令和4年)の16,400施設と比較して237施設増加しており、微増傾向が続いています。
内訳を見ると、以下の通りです。
産業動物診療施設: 3,923施設(前年比 +16)
小動物診療施設: 12,714施設(前年比 +221)
特に、犬や猫を主に対象とする「小動物診療施設」の伸びが全体を牽引しており、都市部を中心に新設が続いています。
2. 都市部への集中と地域別分布
都道府県別の小動物診療施設数を見ると、上位5都府県は以下の通りです。
東京都: 1,749施設
神奈川県: 1,148施設
大阪府: 905施設
埼玉県: 795施設
愛知県: 738施設
これらの上位5都府県だけで、全国の小動物診療施設の約42%を占めています。人口密集地におけるペットの家族化や、高度医療へのニーズの高さが、施設数の分布に色濃く反映されている結果となりました。
3. 個人開設と法人開設の比率
開設者の区分で見ると、興味深い変化が見られます。
小動物診療施設において、個人による開設は依然として多いものの、近年は「医療法人」や「株式会社」による組織的な開設が増加しています。
個人: 8,767施設
法人(会社・団体等): 3,947施設
法人の割合は約31%に達しており、病院の大型化や多角経営、グループ化といった業界の構造変化が数字からも見て取れます。
4. 産業動物診療施設の現状
一方で、牛や豚などの「産業動物」を対象とする施設は、3,923施設と横ばい、もしくは微増に留まっています。こちらは北海道(1,105施設)が突出しており、次いで鹿児島、宮崎といった畜産が盛んな地域に集中しています。小動物分野とは対照的に、広域をカバーする大規模な診療組織による運営が主軸となっています。
まとめ
最新の統計データからは、日本の動物医療、特に小動物分野において、施設数が着実に増加していることが分かります。また、法人化の進展や都市部への集中といった傾向は、今後の医療機器の導入サイクルや、求められるサービスの専門化にも大きな影響を与えると考えられます。
当事務局では、こうした公的な統計データを注視し、今後も動物医療に携わる皆様に有益な情報を発信してまいります。
コメント